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2014年4月29日火曜日

エントレックの仮想アース装置テルス シルバーテルスよもやま話

オヤイデが先月から輸入販売を開始した、いまだ謎多き仮想アース装置、スウェーデンはエントレック社のテルスシルバーテルス。実は、着々と各地で使用者の情報が集まってきていまして、すでに国内で10台弱お使いいただいています。オヤイデの試聴室はもとより、すでに取り扱いを始めていただいているダイナミックオーディオ5555HAL3さん、マックスオーディオさん、そしてイベントや評論家宅での試聴から、数々の効果的な使い方が、浮かび上がってきています。

こちらは3月に開かれたダイナミックオーディオ5555のHAL3でのイベントの様子。20名弱の予約席は募集開始早々に埋まり、会場は熱心なオーディオファンで埋め尽くされました。この日は、2時間あまりテルスやオヤイデ製品の試聴を、福田先生のトークの元に繰り広げたのでありますが、内容が濃すぎるので、はしょってお伝えします。

テルスの効果は中低域の解像度の改善が一聴して改善されて、これは会場の人たちも分かりやすくて納得していただけたかと思います。テルス無しの時に比べて、テルスありだと、ウーハーにまとわりつく余計なだぶつきが一掃され、個々の楽器がぐぐっと実在感を増し、しかもある種のエネルギーを伴ってスピーカーから放射される感じです。これは分かりやすい。次にシルバーテルス、こちらはテルスの効き方とは違い、主にボーカルを中心とした定位感の向上、高域の瑞々しさが劇的に向上、いわゆる痒いところに手が届く、実に繊細かつ緻密な音作りになるのです。私はエントレックを会社の試聴室や評論家のところに持ち込んで聴いた、昨年末の時には、テルスの効果の方が誰が聴いても分かりやすく好みだったのですが、ダイナミックオーディオさんのところで試聴を重ねるうちに、シルバーテルスの一見するとさりげない利き方に好感を持つようになりました。一聴するとシルバーテルスの効き目は、ごくごく自然で、派手さはないのです。けど、聴き込むうちに、これは凄い変化だと分かるのです。これは私の言葉足らずな文章表現ではお伝えしきれない効果なので、実際にこれを導入しているユーザーさんのレポートをいずれ紹介したいとも思うのですが、ダイナの島さん曰く「音が止まる」という表現をされていました。これは私の解釈では、特にボーカルがあるべきところにある、音の定位がきちんと定まるということだろうと思います。実際、ダイナの島さんと、HAL3のオーディオシステムで試聴を繰り返していると、シルバーテルスを接続した途端、ボーカルのアゴの動きが分かるようになるのです。島さんは、シルバーテルスを使って悪い事は一つもない、音楽が自然に再現されるようになるという意味合いの事もおっしゃられていました。

ところで、面白い事に、接続するアースケーブルの本数や、端末のメッキによって、ボーカルの位置が微妙に変化するのです。これは効き目がツイーター側に寄るのか、ウーハー側に寄るのか、すなわち高域側に顕著に現れる場合と、低域側にシフトする場合があるのか、不思議な現象なのですが、アースケーブルによっても音が変わるのです。この変化は正直、ラインケーブルや電源ケーブルを換えた時と同じ変化度合いです。そして、これは個々のシステムによって様々なのですが、接続する機器によっても効き目が変わってくるのです。いままでの経験では、プリアンプへの接続が最も効果的であることが多いです。また、昨今のハイエンド機器の多くは、アース端子を背面に備えており、アースケーブルの接続はこのアース端子に行うのが、最も効果的であることが多いです。アース端子の無い機器の場合、空いているXLRのオスかメスかが、有望な接続箇所です。RCAジャックへの接続で最も効果の見られた方もいらっしゃいましたので、もうこれはお使いのシステムであれやこれやと試してみるしか無いのです。また、アナログRCA、アナログXLRの場合、空きジャックは右チャンネルと左チャンネルあるわけですが、どちらか片チャンネルのみより、同じアースケーブルを2本用意して、両チャンネルに同時接続してやった方が、好結果が得られるということも報告されています。


こちらは3月末のマックスオーディオ主催、九州ハイエンドオーディオフェアにおける福田雅光先生の試聴会の模様。この時は、ラックスマンのプリアンプに接続したのですが、このときはXLRジャックへの接続で顕著な効果を発揮しました。ダイナでの試聴会のときも、ラックスマンのプリへの接続だったのですが、この時はプリのアース端子への接続で顕著な効果が得られました。展示会場での試聴イベントというのは、その場に用意されたオーディオシステムで、限られた時間内でセッティングと事前検証を行い、場合によっては一発勝負で本番に臨むこともあるくらい、脆弱な条件の元で音出しをしなければならないという事情があります。うーん、もう少しじっくりと検証が必要のようですね。



そんなわけで私、5種類のアースケーブルを開発しました。1本定価4,000円です。名前は1430Eシリーズとしました。このアースケーブル、ケーブル部分はオヤイデの1430シリーズというPCOCC-A機器内部配線材を使用しています。


このオヤイデの配線材1430シリーズは、実はタンノイのキングダムを始めとした上位クラスのスピーカーの屋内配線にも使用されているほど、高音質なのです。タンノイは従来、バンデンハルの配線材を使っていることを特徴としていましたが、キングダムあたりからオヤイデの配線材も使うようになりました。キングダムのカタログには、なぜかアクロリンクの内部配線材と誤表記されたこともありましたが、実際にはオヤイデの1430です。


しかしながら、例のPCOCC-A製造中止問題があって、1430は在庫限りの希少品となってしまいました。なぜ、そんな残りわずかなケーブルをエントレック付属ケーブルにしたかというと、2つの事情があります。一つはオヤイデ電気で売っている何本もの配線材、タフピッチから銀線までを試聴して、これがとても音がよかったからです。銀線はまた別格なのですが、これはおいおいオプション品として単売予定です。もう一つの理由は、タンノイからの注文キャンセルがあって、1430の16ゲージの黒が大量に余ったからです。タンノイには、数年前からこの1430をオヤイデから供給し続けていたのですが、昨年のPCOCC-A生産終了にともなう1430の生産遅れによって、タンノイは待ちきれずに注文をキャンセルされまして、その後に遅れて出来上がってきた1430があるのです。とはいうものの、これも残り800mほどなので、まぁアースケーブル用に使い続けて1年保つか保たないかと言ったところです。こんな裏事情を書いていいのかどうかなのですが、やはりオーディオ用に作られた配線材は、アースケーブルに使っても音が良いというのは事実です。


これを改めて実感したのは、先日訪れた田中伊佐資さんのご自宅でのアースケーブル一斉試聴。オヤイデ電気秋葉原店で売っている配線材や、開発中の5N純銀平角アースケーブルなどを持ち込んで、半日ほど掛けてフォノイコとトーンアーム間のアースケーブルの比較試聴を行ったのです。詳しいレポートは来月号の月刊ステレオの田中伊佐資さんの連載「ビニジャン」に掲載されると思いますが、とにかくアースケーブルによって音がころころ変わるのです。さらに、持ち込んだテルスとシルバーテルスの検証も行いまして、これも接続箇所で効果の出方がずいぶん違うのです。ちなみに上の写真は、長丁場の試聴が終わり、テルスとシルバーテルスとを片付けた後に撮影したもので、試聴の最中は撮影する余裕も無く、ひっきりなしにケーブルのとっかえひっかえ、ありとあらゆる接続パターンを試みていました。一番効果のあったのは、なんとトーンアームからシルバーテルスへのアースケーブル直結でした!これはアナログファンにとって福音ですぞ。私も近いうち、自宅のオーディオシステムへシルバーテルスを繋げたい!あ、トーンアームが無い!どなたか押し入れに眠っているFR-64Sありませんか?

こちらは録音スタジオやオーディオルームの施工で有名なアコースティックエンジニアリングさんでの試聴風景。同社の試聴室のオーディオシステムへテルスとシルバーテルスを繋いで、同社のスタッフや社長さんと一緒に効果を検証しました。この時に面白かったのは、iMacへの接続でかなりの効果があったこと。すなわちPCオーディオでの効果なのですが、USBアースケーブルをiMacの空いているUSB-Aジャックに差し込んだ途端、全てにおいてグレードがワンランク上がったような、クリアーで立体感のある再生音が、奏でられたのです。これには同席した全員が納得。さらに面白かったのはフォノイコへの接続。レコード再生でも如実に効果が現れたのです。シルバーテルスは、やはり中低域の解像度が向上して、パワフルでめりはりの出る改善方向。シルバーテルスは、銀を多く含んでいる影響か、高域の繊細さや音場感、ボーカルの実在感や陰影がすごく奇麗に表現されるようになって、この効果は他では得難いものがありました。

こちらは貝山先生のご自宅のオーディオルーム「ボワノワール」での試聴。テルスとシルバーテルスを持ち込んだのですが、貝山先生はシルバーテルスをお好みのようで、試聴の後半はずーっとシルバーテルスをご試聴なさってました。貝山先生の試聴は丸一日、とにかくじっくりと聴き込まれていました。その模様は、現在発売中の季刊オーディオアクセサリー152号に掲載されていますので、ご興味のある方はぜひお読みになってみて下さい。ただ、この試聴の際は、まだアースケーブルを吟味しきれてなかった時で、アースケーブルには、暫定的にオヤイデのシリコン絶縁電線RSCBを用いていました。前述の1430Eアースケーブルを用いていれば、もっと多くの発見を貝山先生にしていただけたのにと、今更ながら思っております。

こちらは福田雅光先生宅でのテルスとシルバーテルスの試聴。福田先生はテルスがお好みで、その明瞭な変化に関心されていました。テルスはメリハリがついて、奥行き感が出て、とても分かりやすい変化です。これは福田先生のシステムでもそうでしたし、他のシステムでも軒並みそうでした。テルスが15万+税、シルバーテルスは34万+税なので、倍以上の価格差です。これは悩みどころです。実際には、ダイナさんやマックスオーディオさんに出向いていただき、実際の個性の違いと言うか、聴きどころの違いを体感していただいた上で、懐具合と欲望との兼ね合いで、どちらにするか決めていただくのが良いと思います。ま、おそらく一度、テルスなりシルバーテルスなりを聴いてしまうと、導入しないわけにはいかなくなりますので、ご自宅のオーディオラックにテルス/シルバーテルス用の空きをご用意の上、ご試聴に臨まれるのがよろしいかと思います。

さて、ここからは余興。シルバーテルスの開封の仕方です。こんな段ボール箱にシルバーテルスは入っています。シルバーテルス自体は22kgほどなのですが、梱包重量は26kgもあります。アンプ並みです。 この状態はすでに結束バンドを外した状態です。

段ボール箱を垂直に持ち上げると、木箱が出てきます。これはまだシルバーテルスではありません。シルバーテルスを収納している木箱です。

段ボールの下箱もろとも箱を反転させます。 

よっこらしょっと。反転させました。 

そして、段ボール箱の下箱をすぽっと垂直に引き上げると、木箱の全貌が現れます。 シルバーテルスの焼き印が押されているのがわかるでしょうか。

そして、プラスドライバーを使って木箱の上蓋を止めている6本のネジを外していきます。実はエントレックから輸入した時点では、このネジはトルクスネジ(ヘクスローブネジ)なのです。けど、トルクスネジは日本では一般的ではないので、お客様のところで開封できないというトラブルになりかねません。そこで、オヤイデ電気での検品出荷の際、このトルクスネジをプラスネジに交換しているのです。

さて、木箱の上蓋を外したら、再度木箱をひっくり返します。

そして木箱の本体部分を垂直に引き上げると・・・ 

ようやくシルバーテルスがお目見えします!いやー、お疲れさまでした。こんなわけで、シルバーテルスは、ハイエンドオーディオ機器並みにずいぶんと頑丈な梱包に包まれているのです。余った木箱は、よろしければオーディオケーブルの収納箱などにお使いいただけるとよろしいかと思います。一方、テルスの梱包形態は、段ボールと緩衝材のみで、木箱はありませんので、もう少し開封作業は楽です。

さて、国内での販売が始まったばかりのテルスとシルバーテルス。現在、展示試聴およびご購入が可能なのは秋葉原のダイナミックオーディオ5555のHAL3(テルス/シルバーテルス)と、マックスオーディオの小倉店(シルバーテルス)、同福岡店(テルス)です。また、来月には北海道のキャビン大阪屋と、オーディオユニオンお茶の水店、大阪のシマムセンでも展示試聴を開始予定です。ではでは、エントレックのよもやま話でした。

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